レビューとは書いたが、感想なのかレビューなのか自分ではよくわかっていない。
と、そろそろ言い訳はやめにして本文に入る。ネタバレは可能な限り避け、もしやむを得ない場合は白字にするつもりではいるつもりだが、一応、ネタバレ注意である。
[あらすじ]
100年前、英雄イザナギによって封印された怪物ヤマタノオロチ。その戦いの際に、イザナギをさまざまな神秘の力で手助けをした白狼・白野威(しらぬい)は、神木村にある神木の袂に像が作られ、村の守り神として祀られていた。
しかしそれから百年が経ち、オロチを封じていた宝剣「月呼」が何者かに引き抜かれ、オロチは復活する。だが、木精サクヤ姫の力で大神(狼)アマテラスも神木村にある白野威像に宿り復活。ヤマタノオロチを倒し、ナカツクニの安寧を取り戻すために、絵師のイッスンと共に旅に出る。
(Wikipediaより引用)
[プレイのきっかけなど]
私がこのゲームをプレイしたのは周囲にこのゲームが好きな知り合いがおり、そのうち一人とゲームを貸し借りする仲になりおすすめの作品として借りた、ということに端を発する。
実は本作は私がレビューを書きたいと思っていた作品であったりもする。なぜかというとその友人と私では感想が違ったこと、またネットで調べた感じではどうも世間では友人の感性のほうが正しいようで、この意見を発してみたかったから、というのがある。
[だいたいのまとめ]
神様である狼、アマテラスが筆業と呼ばれる特殊な能力と神器と呼ばれる武器を使い、ナカツクニに平和をもたらすために戦うといった展開だ。
絵師であるイッスンとは偶然出会い、筆業を極めるためとしてアマテラスについていくことになる。イッスンの主な役割として言葉を話すことができないイッスンの代わりに登場人物と会話したり(アマテラスの意志と一致しているかはわからない)、ダンジョン等での謎解きのヒント役といったところだ。
ゲームの感覚としては『ゼルダの伝説』と近く私は今でも和風ゼルダの伝説だと思っている。先に触れた筆業が『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』におけるオカリナ、『風のタクト』におけるタクトのような存在と考えればだいたいわかるだろう。実際、ダンジョンの謎解きで筆業を用いないものはないといっていい。
[筆業]
やはりこのゲーム最大の特徴として語るべきなのは筆業だろう。R1ボタンを押すと見ている風景が水墨画チックな見た目に変化し画面中央に筆(アマテラスのしっぽ?)が出現する。左スティックでこの筆を動かすことができ、□ボタンを押すことで筆が紙に接する。あとは押し続けて左スティックで筆を走らせる、というわけだ。最初はアマテラスの持っている『光明』のみだが、すぐに壊れてしまったものを修復する『画龍』、イベントでも戦いでも大活躍な対象を真っ二つにする『一閃』という具合に取得していく。様々な筆業を覚えることで選択肢が広がるのは非常に楽しい。惜しむらくはそれぞれの筆業を誤認してしまうことがまぁまぁ多いことだ。例えば一閃は対象に対し横一文字に線を描けばよいのだが、配置によっては「対象から書き始めて別の対象に線を伸ばす」という筆業(割と多い)と誤認されることが特に多い。逆もありうるがその場合直線ではなく曲線を描くように心がければなんとかなる。とあるイベントで複数の敵にそれぞれ違う筆業をあてなければならないシーンがあり、ここで誤認が発生するとつらい。また、スカ(何も発動しない)場合ならいざしらず、何かが発動してしまうと墨瓢箪(筆業を使うためのリソース。言わばMP)を消費してしまうため、面倒。こっちは戦闘中に特に厄介。墨瓢箪が空っぽになると神器が使えなくなるのもつらい。
[シナリオ]
あらすじを見ればラスボスかと思われるヤマタノオロチだが、中盤でボス戦の末勝利し、退場する。ここから次なる目標となるラスボスの存在が明かされるまでは目の前の目につく怪異をとりあえず解決している(前に進んではいる)風ですこし弛みがち。ただしラストは文句なしで感動できるものであり、評価に値する。
シナリオそのもののも日本神話を下地にしており非常に親しみやすい。また、竹取物語、舌切り雀、南総里見八犬伝といった日本の有名な作品も抑えており、非常に楽しい。ラスト近くの展開は北海道のアイヌで伝わる伝承をもとにしており、好感が持てる(私が好きだから、というだけだがそれにしても知らない人は全く知らない話なので扱われているのはうれしいものだ)
ただ、シナリオの一部には疑問が残るものもあり、そこは減点である。正直私はラストの展開にいたるまでどうしてもシナリオを評価できないでいた。ラストがあそこまで良いものでなければ、シナリオは最悪だった、とここに書いていたことだろう。実際、いろんなレビューを見ているとシナリオは最後がとっても良くてーという記述はたくさんあるが、ほかの部分については触れられていないものも多いので、最後が良いから目をつぶったのではないだろうかと思う。そうでなかったら最後の美しさの前に不満を忘れたのかもしれない。気持ちはわかる。
まず一つにアマテラスの描写について。主人公であるオアマテラスは神様なのだが、所詮はオオカミ……というか犬にしか見えない存在である。動きもとぼけていて単なるとぼけた犬にしか見えない。周りの評価などを聞いているとこれがかわいい……らしい。私は主人公に感情移入したいタイプなのでどんなシリアスな状況でもとぼけたしぐさを取る彼には正直理解できなかった。まぁ、これに関してはアマテラスがかわいいというのが世間的には大きな評価の一因であるらしいので、それを悪いとは言えないだろう。問題はそれが一貫されていないことだ。一番目立つのはとあるキャラクターが死んだシーンだ。そのキャラクターが死んだ原因はとある妖怪が力を取り戻したことが原因であり、そしてそれはアマテラスの行動によるものなのだが、それについて「偉大なるアマテラス大神はそのこと(要約すればその妖怪が力を取り戻しそのキャラクターが死ぬこと、またそれが必要だったということ)を見抜きそのうえで行動していたのだ」(意訳)という風に地の文で描写される。実際のところこの地の文も主観が入ったものであり、アマテラスを持ち上げる書き方がされているので好意的に解釈されたともとれるのだが、それにしても後の地の文とかみ合わない部分があり、ずっととぼけた描写をされているキャラクターがこの瞬間だけ全てを見通しているような描写がされるのには大きな違和感があり、またさらに言えば「そのキャラクターが死ぬ必要がある」という部分はまったく伏線がない。好意的に解釈すれば実はアマテラスがちゃんと見通しているような描写そのものはなくはない。それはプレイヤーが彼(彼女?)を動かす場合だ。この場合たいていは謎解きに必要な行動をするときそれをわかってないイッスンが批判するようなことを言い、実はそれが正しかった、という展開となる。ただ、こちらの解釈でも伏線もないことまで見通せるという伏線はやはりなく、不自然である。なにより、「死ぬ必要があった」に関しては死ぬ必要があったとは思えない。そもそもそのキャラクターが死ぬ必要があったのは「死ぬことで足りない霊力を補い、その霊力で妖怪の本拠地を突き止めるため」なのだが、目の前に問題の妖怪(しかも力を取り戻していない)がいるにも拘らず、わざわざ力を取り戻させてやり殺させてまで本拠地を突き止める必要があったのかはとてつもなく疑問である。
また、シナリオについてもヤマタノオロチ(そしてその黒幕)が現れた理由についていくらか考察がされるのみで真相が明らかにならない。また、それに絡んで月の民と呼ばれる存在が語られ非常に物語上の大きな役割を持っているが、話としては全然語られず、消化不良。といった問題が挙げられる。ラストを見るに続編を作るつもりがあったようなのだが……。続編についてはあまり良い噂は聞かない。というか、あらすじを聞くだにこれらの問題にかかわっているようには思えないし、聞けば開発元が違うらしいので、いろいろ内部であったのだろう。そういう意味ではきちんとした続編がなかったため、続編への余地として残された部分が無残にも残された、といえるのかもしれない。続編はまだプレイしていないのでプレイしたらまたレビューを書こうと思う。
[ビジュアル]
このゲームの最も大きな見どころであると思われる。筆で描かれたような世界は見ていて楽しく、そして美しい。HD版である絶景版は特に、である。
さらに言えば、大神おろしと呼ばれる本作一番の見どころはとても美しく目を奪われる。次の大神おろしが楽しみでストーリーを進める、という感覚もある。もちろんほかにもいろんな楽しみもあるのだが。
どうしても、演出については言葉を尽くすのが難しく、先のシナリオの批判が多くなってしまったが、ビジュアル面では本当に素晴らしい。今ならPS3で絶景版をやるのを強くお勧めする、そして是非この美しさを味わってほしいと思う。
[戦闘]
表と裏と呼ばれる装備個所にそれぞれ神器を装備して攻撃する。□ボタンで表、メイン攻撃。△ボタンで裏、サブ攻撃を行う。一つの武器種につき表と裏で二つの攻撃方法があるため人によって戦略がわかれ非常に面白い。
勾玉は射程が長いが威力が低い、ただし連続して命中する。
剣は動きは大振りだが威力が高い。
鏡は中間といったところだ。
といったところ。ちなみにこれは表にした時の話。裏にすると、鏡は盾、勾玉は射撃と大きく性能を変える。また各武器種ごとに裏の性能は二種類のどちらかになる。例えば勾玉なら、マシンガンかショットガンの違い、鏡ならただ防ぐだけか当身になるか、といった違いがある。また、道場で技を覚えることもでき、それによりさらに戦術が分かれることになるだろう。戦闘そのものの難易度は低いが、それぞれが自分の戦い方を見出せるのは楽しい。
残念なのはたとえ強化しても上のランクの武器にはかなわないことで、例えばショットガンの勾玉を使いたいが、最強の勾玉はマシンガンだ、といった問題が起こり、その辺は残念。
敵のバリエーションに富んでおり、それぞれきちんと対策(たいていは筆業)を取ることで楽に攻略できる。後半になってくると見た目が違うだけの数値を強くしただけの敵になってくるのだが。それぞれの弱点については一度倒せば妖怪絵巻と呼ばれるモンスター図鑑の解説でヒントを得られるため分からなかった場合も安心。ただし、ただただ攻撃を加えて装甲を壊し、その間にダメージを与える、時間経過で装甲が復活し……といった敵もおり、これらの敵は愚直に殴るしかなく、時間もかかるため非常に面倒。
また、ボスも倒し方が決まっており、倒し方さえわかれば楽に倒せるというタイプの者が多く、謎解きゲームのボス、といった感じ。ただ、硬いだけの面倒なボスも一人いるにはいる。
それからこれは戦闘以外にも当てはまるのだが、カメラワークが非常に悪い。さらにロックオン機能もないため、敵を捕らえるのが大変。特に飛んでいる敵はすぐにカメラの範囲から消えてしまい非常に面倒である。具体的に言うと、カメラの回転が非常に遅いこと、上と下には向きにくいこと、カメラとオブジェクトと重なるとオブジェクトが消えるのだが、モンスターも消えてしまうこと、などがあげられる。ちなみに、このカメラの問題は謎解きパートでも問題になるときもある。
[総評]
シナリオは一部いきあたりばったりなように感じたり、戦闘も楽しいがやはり粗が目立ったりと少し残念な出来だが、筆業というシステム、筆で描かれた美しい世界、そして感動のラストと、それに勝る評価点が数多くあげられる。アマテラスの可愛さというのも魅力か、ケモナーは是非プレイするべきかと思う。
多くは語られないなりに明かされている情報から解釈することで見えてくる世界設定も非常に興味深く神話などが好きなら一度プレイしてみる価値があると思う。
10点満点なら8点と言ったところか。シナリオの不備とカメラワーク等のシステムの練りこみ不足さえなければ、より良い作品だったと思う。