エンターテイナー・アモルのカレイドスコープ

AWsの代表、エンターテイナーであるメリーさんのアモルが万華鏡の如く感じたことを書き綴る

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【まとめ】AWs新連載選考会候補作品それぞれについて語る

 こんにちは。

 現在AWs -Another Worlds-では新連載選考会というイベントが行われています。

 

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 これはAWs公式サイトで新しく連載する作品を選ぶという企画で、作品を読んで気に入った作品を投票ハッシュタグでツイートするだけ。しかも、作品末尾のツイートボタンならツータッチで投票可能です。

 しかも、三名様に図書カードまで当たるというのだから、これは投票しないと損というもの。

 

 ところが、思ったより投票状況は良くない模様。どうやら、10作品もあるから読みにくい、という意識が先行しているらしい。実際にはそれぞれ五千文字〜一万文字程度の読むのに一時間もかからないくらいの量でしかないのだが、そういう事なら仕方ない。

 今回は10作品それぞれについて語ってみようと思う。

 

 

 

 紹介する順番はAWs公式の紹介順に倣い、五十音順での紹介とさせてもらう。私のお勧め順ではないので誤解されないように。

 

詳細解説

アントウォー

 アントウォーはドヴェルグと呼ばれる巨大な蟻の怪物を使役する戦争を扱った物語だ。

 『太平洋の世界樹』の未来の話のようで、『太平洋の世界樹』の冒頭で起き、そしてラストで解決した事件が「文明大崩壊」として語られ、その後荒廃した地球を舞台としている、というポストアポカリプスものとなっている。

 『太平洋の世界樹』の未来の話ではあるが、基本的にポストアポカリプスとさえ理解しておけば、物語の理解に支障はない。

 荒廃し、資源不足のアメリカ大陸で、複数の勢力が復興のためと称して争いを繰り広げている、そんな中、ニューアメリカと呼ばれる一大勢力に村を焼かれ、両親を殺された主人公が復讐のためだけに対ニューアメリカ連合の軍人となる、と言うような物語だ。

 ただ、一章のラストでウミと呼ばれる謎の男から勧誘を受けており、ただニューアメリカの敵を殺すだけの物語でもないのかもしれない。

 ちなみにウミという名前は『She needs A hedge.』で名前だけ言及されており、それによれば、どちらかというとヴィラン側に属する人間であるように伺える。

 

 戦闘描写としては、主人公は巨大な蟻の背に跨る、ドヴェルグ騎兵と呼ばれる存在で、縦横無尽に戦場を駆け巡り、ウィンチェスターライフルを駆使して戦う様子が描かれている。

 こちらは寡兵、敵は大軍、と言うのが基本的な勢力状況なので、今後も主人公達ドヴェルグ騎兵が一騎当千のアクションを繰り広げる展開に期待が出来るだろう。

 一方で、戦争というテーマをメインにしている都合上、それなりに重苦しい展開が待ち受けているような予感もさせる。

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叡智を追わぬ神秘の学徒達

 AWsで最大の人気カテゴリにして最大手カテゴリでもある「現代神秘」な世界を扱った物語だ。

 簡単に言うと現代社会に神秘的な存在、オカルトな存在が実在し、さまざまな国家機関や私設組織がそれらによる被害「霊害」に対処している、と言う世界観だ。

 その中でも本作は魔術学校を舞台として扱うようで、一章でも早速魔術を使う感覚や手法について様々な情報が開示された。

 これまでの作品では魔術師は仲間としても登場しつつも、どちらかというと霊害を起こす側として描かれがちで、詳細なロジックが描かれるのは本作が初となる。

 1991年と時代が古めでAWs全体で見ても2番目に古い時代のため、他作品を知っていないと前史がわからない、という可能性が低そうなのは魅力か。

 逆に、今後『退魔師アンジェ』や『異邦人の妖精使い』などに本作の登場人物が登場する可能性を考えると、今のうちに読んでおきたい一作になりうるのかもしれない。

 設定としてはアメリカの霊害と戦う組織の人員を養成するための学校という設定で、それゆえ、魔術を学ぶ学校でありながら、多くの生徒は「国家機関で働くため」として勉強しており、「叡智を追わぬ」というタイトルの意味はそこにあるようだ。

 そしてその一方で主人公は「私は叡智に辿り着くために」と地の文で宣言しており、異なる事情を持っていることが仄めかされている。恐らくそれこそが本作の軸になるのだろう。

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神秘冷戦

 これまた同じく現代神秘を扱った物語。こちらはむしろ神秘を扱った話としては最新に近い2032年を舞台としている。

 2032年と言えば『三人の魔女』と全く同じ年だが、神秘根絶が叫ばれ事実神秘が大きく衰退している『三人の魔女』と異なり、未だに様々な神秘組織が小競り合いを続ける世界となっている。

 本作の中で扱われるのは、これまで様々な作品で一筋縄ではいかないらしい様子が描かれてきた唯一神の勢力。

 以前に書き下ろされた『コンクラーベベツレヘム消失』で触れられた唯一神神秘勢力の最大手「インクィジター」。というか、『コンクラーベベツレヘム消失』は本作の書き下ろし扱いになるそうだ。

 話としては他の作品から独立しており、気軽に触れやすい、とも取れそうなのだが、複数の神秘勢力が蠢き、唯一神勢力の中でさえパワーゲームがあるらしい本作は、神秘とその戦争以上に政治ゲーム的な側面が強そうに思える。

 AWsに初めて触れる、という視点で見ると、ライトな魔術から触れられていく『叡智を追わぬ神秘の学徒達』に比べ、少し触れにくい空気を感じることは間違いないだろう。

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千年の平和の袂で

 再臨予言960年なる未知の年号の時代が舞台の物語。登場人物から『神秘冷戦』や『三人の魔女』に近い年代であることが伺える。

 地球全てを支配して恒久平和を実現した王国のもと、スティグマータ・ガントレットと呼ばれる装備を使いサクラメントと呼ばれる力で謎の敵と戦う戦士達の物語。

 現代的な街並みのもと、巨大な魔物のような存在と神秘的な武器で戦う、という画が印象に残る作品。

 敵は巨大であるだけでなく強靭で強力で、それを複数の異なる武器を使う戦士達が連携して倒す。所謂ハンティングアクションのような戦闘が魅力だ。

 一方でストーリーラインが一章の時点で充分に提示されていないため、今後の評価が難しい。

 主人公達の部隊は本来の任務の傍ら、国家転覆を企む反逆者の捜索、確保を命じられる。と言うところで一章が終わってしまうのだ。

 実はこの反逆者の名前は、あるAWsの他作品の主人公の名前と全く同じであり、その作品を既読であれば、それが続きが気になるフックになるのだが、そうでないなら、ただただ次の展開が読めないだけで終わる。

 AWs既読者と未読者、両方にフックとなるようないい塩梅には書けなかったのだろうか。

 悪い作品ではないのだが、最後だけが少しだけ残念である。

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塵は塵に還るべし

 マキナギア、と呼ばれる全高3m〜6m程度の量産型ロボット兵器が存在し、それを所持する三つの勢力による第二次冷戦が繰り広げられている世界を舞台とした物語。

 マキナギアの五倍もの全高を持つ「デミデウス」と呼ばれる巨大ロボットを召喚する「呼応者」と呼ばれる存在が出没しており、彼らはマキナギアをも圧倒するその強さで私利私欲を満たそうと暴れている、と言う設定。

 主人公も呼応者の一人であり、デミデウスヴァーミリオン・トリーチアを操り、他の呼応者が操るデミデウスから人々を守るために戦う。

 ロボットものであると同時に一種の変身巨大ヒーローのような文脈も感じる一作。

 西暦2008年の時点でロボット兵器が存在すると言う設定は少しだけ混乱の元だが、これについては、過去に地球に襲来した異星人の技術によるものだと説明されている。

 話の筋が単純明快で、今後も主人公がデミデウス呼応者と戦っていく、と言う展開が明白であること、スーパーロボット風であるデミデウスとリアルロボット風であるマキナギアの二種類のロボット、それぞれのアクションにも期待が高まる。

 また、デミデウスとは何なのか、なぜ呼応者が存在するのか、といった物語を牽引する謎が明示されており、それらを解き明かしながらデミデウスとの戦いを描く、という今後の展開に期待が高まる。

 ちなみに、異星人が襲来し云々と、軽く流されるあの世界の過去については『Angel Dust』で語られている。デミデウスも『Angel Dust』のスーパーロボット・DEMに酷似しており、無関係ではないことを匂わせている。筆者によれば、

決して無関係ではないため、読んでいると読んでいるが故の視点を楽しめるだろうが、読んでいなくても100%物語を楽しめるようにはなっている。また、DtD*1とAD*2はそれぞれ作風も異なるため、片方のファンがもう片方も必ずしも楽しめることを保証するものでもない

 との事で、本作を楽しむのに『Angel Dust』を読むことは必須ではないようだ。

 筆者はつい最近完結した『Angel Dust』の最終回が猛烈に焼き付いているので、兎にも角にも本作をお勧めしたいが、ともかくまずは一読してみて欲しい。

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鉄血福祉

 人類が宇宙に進出し、異星人との戦争さえ乗り越え、複数種族による連合宇宙政府を樹立した「新宇宙暦」の世界を扱うスペースオペラ作品。

 スペースオペラを題材としつつ、少数種族や力の弱い民族などを権利擁護する「ネオ・アドボカシーボランティアーズ」と、現在の民族平等主義による結果的な地球人類軽視に異を唱え、地球中心主義への回帰を叫ぶ「セントラルアース」という極端な二大勢力の対立を扱った物語。

 両者を並べると、ただただ「ネオ・アドボカシーボランティアーズ」が正義で、「セントラルアース」が悪なように感じるが、新宇宙暦の世界はtipa08による『未来を探して』で既に描かれており、「ネオ・アドボカシーボランティアーズ」は権利擁護のために過激な手段に走りすぎる組織であると語られており、セントラルアース共々危険な集団と見做され、敵対組織的な扱いを受けていた。

 このため本作は、それぞれ極端な二大勢力の良いところと悪いところ、それぞれを描くテーマ性の強い物語になることが予想されるが、一章は極めて内容が薄く、とても続きを見たいという気持ちになれない。

 筆者自身も反省のツイートをしており、

次の選考会には修正を加えた一章を公開し直したい

 などと、当選を諦め、次を見据えたコメントをしていた。

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能力者福祉

 鉄血福祉と並んで「福祉シリーズ」と呼ばれるテーマシリーズ作品であるらしい。

 心因的な原因により「能力」に目覚める青少年と、それに対処する国家福祉機関の奮闘を描いた物語。

 発生した不可思議な現象から、能力を予測し、能力者や心の歪みを推理していく、ミステリー的な要素を持つ作品。

 全て前後編で構成されるらしく、明らかに出題と回答、というミステリー的な構成を意識していると思われる。

 能力にはかなりピンキリがあり、親から虐待を受けている少年が目覚めたら巨大な腕を発現させる能力のような危険性の高いものもあれば、摂食障害の少女が目覚めた自身のカロリーを食べ物に変換する能力のように危険性はほぼないものもある。

 ただ、危険な能力はニュースになりやすく、能力者をすなわち危険な存在と思い、恐怖している市民も少なくなく、日本でも能力者に対処したSATの隊員の中には過激な能力者排除論に傾倒しているものも少なくないようだ。

 しかし、先に説明した通り、能力者は心因性で生じるという説があり、適切にケアすれば能力を暴走させることなく救うことが出来る。

 一章のラストでも、福祉分野出身の手塚とSAT出身の田中が危険が想定させる能力者への対応についてケアと排除で意見をぶつけ合うシーンがあり、「ケアが排除か」がメインテーマの一つであることが窺える。

 ところで、手塚と田中という名字は、『鉄血福祉』でも主人公二人の名字として使われている。もしかしたら祖先と子孫の関係にあるのかもしれない。だとしたら、なんと因縁深い血筋だろうか。

 また、2033年という舞台は『三人の魔女』の2032年に近く、『三人の魔女』に登場する「生まれつき不思議な力が使える存在」である「魔女」との関連性も疑われているようだ。

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Bio-lent Girls

 2060年の未来、ロシアで開発されていた生物兵器バイオハザードを起こし、東欧はゾンビに溢れる地獄と化した、という世界を舞台とした物語。

 主人公に当たる少女三人は、ゾンビに感染しないという謎の体質を持ち、それゆえ人々の希望としてゾンビと戦っている、という設定。

 本当にそれだけしか語られておらず、今後の展開は全く窺えない。

 なぜ三人はゾンビに感染しないのか、が恐らく物語を牽引する謎になるのだとは思うが。

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Return-Soul Isomer

 知性間戦争と呼ばれる大規模な戦争から80年後、依然荒廃した世界で、スカベンジャーと呼ばれるゴミ漁りを生業とする少年と、謎の少女のボーイミーツガールもの。

 要はポストアポカリプスを舞台としたボーイミーツガールであり、話の筋が大変分かりやすい。

 少女は再起動者(リブーター)という存在で、これについてだけ少し理解に努力が必要だが、要は人間そっくりアンドロイドのような存在であり、今は規制されている、とだけ理解しておけば良いと思う。

 少女は明らかに名札に「リリィ」と書かれているのだが、その名で呼ばれることを忌避し、誰かから逃れようとしていることが窺える。

 少年はそんな少女にノリィ(not llyを略したもの)と名づけ、リリィが逃げたい「誰か」と、そして単に再起動者を取り締まっているリブーター監視局から逃れる手伝いをする事を決める。

 また、一章のラストではノリィを追う「誰か」の手先は、ノリィにそっくりの顔をした複数人の存在であることが描写されており、ノリィの秘密を一層引き立てている。その他地味な示唆で言うと、本作のタイトルは漢字(全く意味の違う英単語)で構成されており、一つのことを二つの言葉で説明している。

 たとえば一章のタイトルは逃走者(not lly)で、どちらもノリィの事を意味している。

 そして、次回予告にある2章のタイトルは追跡者(Incapaciter)であり、Incapaciterはおそらく「失格」を意味するincapacityのもじりだ。つまり、追跡してくるノリィに似た複数人は「失格者」と言うことになる。これまた大変興味がそそられる。

 軽く流されてこそいるが、知性間戦争後の物語は過去にも一作存在し、本作は明らかにその未来の話となっている。

 それは蒼井刹那の『Dead-End Abduction』だ。タイトルのフォーマットからして似ているし、なんと、一章のポストタイトルシーンの中身がほぼ同じなのだ。

 それだけではない。こちらもヒロインの名前は「リリィ」なのだ。

 単なるお遊びによる類似もありそうではあるが、恐らく全く意味がないと言うことはないだろう。

 本作単体でも限りなく興味がそそられるが、『Dead-End Abduction』もあわせて楽しんでおきたい。

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リリパットブロブディンナグ戦争

 全作品中最もおすすめできないのが本作だ。

 何せ話がわかりにくい上、もしあなたが過去の話があるなら先に読んでおきたい派ならもう詰みと言っていい。本作の過去は『未来へのトリックオアトリート』。当時の全作品からのクロスオーバーという無茶な企画で、小説の中身もかなり暴走している。

 一応本作だけのあらすじを考えれば、過去の複雑さと比べれば比較的簡単ではある。

 要は異星人と和解し、地球で仲良く住むようになったが、結局、戦争になった。というストーリーである。

 主人公は人間派閥のロボット兵器乗りで、物語冒頭、人間と異星人の講和を叫ぶ「融合勢力」の急先鋒であるインドのスヴァスラジュ直轄地を強襲するところから物語が始まる。

 ところがインド政府は人間によって*3既に壊滅させられており、主人公たちの部隊もまた、明らかに人間の武器により強襲され、壊滅する。

 最後に唯一生き延びた主人公が何者かに回収された事を示唆して、一章は終わる。

 主人公は人間至上主義勢力であり、インドは融合勢力であるため、主人公らとインドの両方を攻撃する人間と言うのは既存の勢力をベースに考えると不自然である。

 十分にストーリーを牽引できる謎ではある。

 ロボット好きにはお勧めできるが、本作より『塵は塵に還るべし』の方がよっぽどロボットものとして優れている。

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お勧め作品

 私のおすすめは

塵は塵に還るべし

Return-Soul Isomer

叡智を追わぬ神秘の学徒達

千年の平和の袂で

能力者福祉

の五作品である。 十作品読むのがだるいなら、せめてこれら、半分の五作品だけでもいかがだろうか?

*1:本作、『塵は塵に還るべし』のこと

*2:『Angel Dust』のこと

*3:異星人は巨人のため室内の人間を撃ち殺す、などといった芸当はできない